奇跡的な

再会と和解。仕事の後、大阪でAKと共にHRと会い、東通りの居酒屋で話す(僕は前に行ったことのある寿司屋に案内しようとして、場所が分からず失敗した)。彼女によると42年ぶりに口を利いたらしい。小・中・高と同じ学校だったのに、そんなにも長い間話もしていなかったのだ。小5のときの、ある事件がきっかけで、彼女は僕とは今後いっさい口を利かないと誓ったのだった。それが、彼女の家の近所に僕の職場が移ったことで、仲直りを考えたらしい。もちろん、僕にも謝る準備は出来ていた。といっても、はっきりとは記憶にない事件だったのだが、彼女がそこまで考えたのだから、そしてそれを今でも覚えているのだから、本当のことなのだろう。僕が思い出したくないだけなのだ。


その事件については、詳しく話して貰った。学校の靴脱ぎ場の玄関先でのことだ。そこまでは僕にも記憶がある。しかし僕にあるのは、何かのことで、むしろ彼女に慰められている光景であり、僕が彼女のIKに対する純な恋心を踏みにじるようなことをした記憶は、やっぱりないのだった。しかし彼女がIKに思いを寄せていたことは知らなかった。そのときも、ショックだったのかも知れない。嫉妬した可能性はある。それで彼女が言うように、彼女が大切にしている写真だか手紙だかを、ちぎれるほどひっぱって、みなに見せびらかしたりしたのかも知れない。みんなが冷やかして彼女が泣いているシーンが思い出せるような気もするが、はっきりしない。


まだ僕の中では、そういうことがあったとしても、それをやったのは誰か別の誰かで、僕はただそのまわりで一緒になってワイワイ言っていただけなのではないか、という疑いがある。しかし、僕は謝った。僕に記憶がなく、彼女に記憶があるのだから。それに、こういうのは被害者は覚えているが、加害者は忘れやすい。たぶん忘れたいのだ。そうも思って、僕は素直に謝った。すると彼女も、子供の頃の記憶はいい加減で当てにならないから、そう本気で謝って貰うこともない、といい、握手を求めてきた。その手を握って、僕たちは42年ぶりの和解をした、というわけ。彼女たちが帰れるいっぱいいっぱいの時間まで飲んでいた。僕は楽しい時間を過ごせた。HRもそうだったと思う。それに比べてAKはちょっとしんどそうだった。