関川夏央『二葉亭四迷の明治四十一年』、同『白樺たちの大正』

時代を遡るように、逆の順序で読んだ。それぞれ二葉亭四迷武者小路実篤が主人公であるが、題名からも察せられるように時代もまた主人公である。過去の話ではあるが、現在とまったく異なった時代とは思えない点も多かった。著者は「夢」を見る男、そしてただ夢を見るだけでなくその夢を「現実」に探らざるをえない男に、明らかに肩入れしている。もちろん距離を取りながらだが、その距離の取り方が絶妙である。政治や経済の状況などの時代への目配りもまた、その頃合いをはかる調整のひとつである。