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学生に薦める本

☆阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』(ちくま文庫) 「私の歴史研究は、自分の周囲との関係をどう理解し、どう行動するか、そこから始まったのです」。ドイツ中世史を専門とする歴史学者である著者が、出会った人々、育った町や土地、じっさいに目にした身…

2012年の3冊番外編

1、港千尋『掌の縄文』 これは写真集です。不思議ですね。博物館などで縄文土器の実物を見ても、こんな感覚はめったに味わえません。手袋などつけていない裸の手が、掌がじかに土器に添えられている。そのためでしょうか。土器だけが写された写真でさえも、…

2012年の3冊

1、安冨歩『生きる技法』 今年の読書における事件と言っていい安冨氏の本との出会いはここから始まりました。『原発危機と「東大話法』『今を生きる親鸞』『生きるための経済学』も、ぐいぐい引き込む魅力がありましたが、とりわけ『複雑さを生きる』『経済…

テア・オブレヒト(藤井光訳)『タイガーズ・ワイフ』(新潮社,2012)

読了。肝心の「トラの嫁」だが,この女の感じというか,佇まいがイマイチよくつかめなかったような気がしたが,「不死身の男」は魅力的で,話も面白かった。訳者も指摘しているように視点の変換も自在で,話の絡め方というか,紡ぎ方が実にうまい。ついつい…

安富歩『経済学の船出』

を読みはじめる。面白い。

堀田善衛『方丈記私記』

を読了。日本語でものを考えるときには、やはり究極的には「天皇(をいだく社会や文化)」について考えることになるという指摘に、あらためて頷き直す。すぐに『定家明月記私抄』に進んだが、こちらは半分ほど読んだところで、いまいち乗り切れず、今回は途…

熊谷達也『邂逅の森』

旅行中に読了。ストーリーに展開があり、マタギに関する知識も得られて、読ませる。ラストも悪くない。だから読後にある種の感慨も残る。が、性的な描写はよいとして、人物の心理に通俗の部分があって、それが気になる。これも紹介本に加えるべきかどうか。

ジャン-ピエール・デュピュイ『ツナミの小形而上学』

ギュンター・アンダースを読みたいが、古本の値段、高すぎ。

平川克美『俺に似たひと』

を読みはじめる。父親より母親が先に死んでしまったのは私も同じで、けっこう自分の境遇に引き寄せて読んでしまう。『ニーチェの馬』の父親は、これほど介護を必要とはしていなかった。神話より寓話より預言より、こちらのほうが深刻に違いない。

吉村昭『破獄』、桑田光平『ロラン・バルト』

吉村昭は最近の通勤の友である。この作品は最後にほろりときた。桑田氏の本は、久しぶりに読み返したいと思っていたバルトに関する本で、前から本屋さんで目にはついていたのだが、機が熟さずにいた。この間手に取ってみたら、すんなりと入って行けたので買…

吉村昭『羆嵐』、安富歩『生きる技法』、安富歩『生きるための論語』、安富歩&本多雅人『今を生きる親鸞』

與那覇潤『中国化する日本』

よく勉強しているという印象。大学生の頃にある教授が、文科系の学問は歴史にとどめを刺す、というようなことを言っていたことを思い出す。文科に限らず、学問はすべて歴史という気がしないでもない。上で天皇制のことに言及したのも、この本の影響だろう。…

吉村昭『ふぉん・しいほるとの娘(上・下)』、同『戦艦武蔵』

長崎にちなんだ読書の続き。前者を読んで『長英逃亡(上・下)』を発注。後者は通勤電車中で思わず落涙しそうになる。「長崎」を離れても吉村昭をしばらくは続けるかも知れない。

なかにし礼『長崎ぶらぶら節』

長崎に旅行に行こうと思っていて、長崎にちなんだものを読んでいる。この本の中に次のような言葉があって、ちょうど他のことで考えていたことと重なっていて、興味深く思ったので引いておく。 「古賀十二郎先生に心からなるお礼をのべたい。あなたのご忠告の…

関川夏央『二葉亭四迷の明治四十一年』、同『白樺たちの大正』

時代を遡るように、逆の順序で読んだ。それぞれ二葉亭四迷と武者小路実篤が主人公であるが、題名からも察せられるように時代もまた主人公である。過去の話ではあるが、現在とまったく異なった時代とは思えない点も多かった。著者は「夢」を見る男、そしてた…

オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』、柄谷行人『世界史の構造を読む』

廣瀬純『蜂起とともに愛がはじまる』

短い文章が沢山並んでいるが、密度は濃い。「考える」「書く」にあたって色々ヒントになることが多かった。

ジョージ・スタイナー『師弟のまじわり』

これは面白い。適当に第六章(ここは広く浅く、ユダヤ、インド、中国、日本が舞台の話題になっているところ)から読み始めたが、ぐいぐい引き込まれてしまう。いまだに興味を持ち続けていること(そして、これからもそれについて考え続けそうなこと)は、中…

坂本義和「人間と国家 ある政治学徒の回想」

いわゆる選良の回想録だが、そうやって突き放せないものがある。ひとりの人間に寄り添って眺めてみると、歴史がぐんとリアルなものになるから不思議なものだ。

東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』

人間は一人でいるときは何不自由なく幸せだったと考えていたこと。ルソーってそういう人だったんだ、と改めて認識し直す。著作集は著名な論考を所収した2冊だけもってはいるが、ちゃんと読んでこなかった。岩波文庫の「孤独な散歩者の夢想」を本棚から引き…

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』、河本英夫『飽きる力』

宮台真司に読ませてやらないといけない。『スピノザの方法』は未読だが、著者がこの先、何をテーマに書くかが楽しみ。そういえば、この間読了した『飽きる力』(河本英夫)も、筆者の身体というか体温が身近に感じられるような著作で、面白く読んだ。

保田與重郎『日本浪曼派の時代』『後鳥羽院』『万葉集の精神』、前田英樹『保田與重郎を知る』、今福龍太『薄墨色の文法』、『大森荘蔵セレクション』、カント『純粋理性批判6』(中山元訳)

トルストイ『復活』

まだ読み終えてはいないのだが、ここから高揚感が生まれるのだろうか。カチューシャがいよいよシベリアに移送されるというところだが、これまでのところ、こちらも年齢のせいか、『アンナ・カレーニナ』に感じた充実感はない。『復活』は作者60代の作品で、…

山城むつみ「文学のプログラム」

再読。その炯眼と筆力にあらためて驚嘆する。

木田元『偶然性と運命』、本川達雄『時間』、『生物学的文明論』、池田清彦『生命という物語り』、山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』、山本義隆『福島の原発事故をめぐって』、Jack London『To Build a Fire and Other Stories』、『火を熾す』(柴田元幸訳)、河合隼雄『老いるとはどういうことか』、鶴見俊輔編『老いの生きかた』

管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』、管啓次郎編『ろうそくの炎がささやく言葉』、明川哲也『なやむ前のどんぶり君』、倉数茂『私自身であろうとする衝動』。

『小さなお茶会―完全版1〜4』、『猫文学大全』(河出文庫)、『猫だましい』(新潮文庫)、『猫にかまけて』(講談社文庫)、『猫と庄造と二人のおんな』(新潮文庫)、『ノラや』(中公文庫)、『猫鳴り』(双葉文庫)、『日本の大転換』(集英社新書)。

仲正昌樹『教養主義復権論』、小林敏明『〈主体〉のゆくえ』

田島正樹『正義の哲学』、森於菟『耄碌寸前』

「正義〜」は以前に書かれていたものと重なる部分もあるが、インタヴューがもとになっているせいか、レトリカルな部分が抑えられていて、文意がストレートに伝わりやすくなっている印象を受けた。元気が出る。煽られているようでは意を得たことにはならない…

朝吹真理子『流跡』、高澤秀次『文学者たちの大逆事件と韓国併合』、檜垣立哉『西田幾多郎の生命哲学』、『ベンヤミン・アンソロジー』(山口裕之訳)