2012年の3冊

1、安冨歩『生きる技法』
生きる技法
今年の読書における事件と言っていい安冨氏の本との出会いはここから始まりました。『原発危機と「東大話法』『今を生きる親鸞』『生きるための経済学』も、ぐいぐい引き込む魅力がありましたが、とりわけ『複雑さを生きる』『経済学の船出』『生きるための論語』には圧倒されました。生きること学ぶことを動態的にとらえようとする姿勢に勇気づけられます。


2、堀田善衛方丈記私記』
方丈記私記 (ちくま文庫)
古典を読むとは、こういうことなんだと改めて感銘を受けました。そして日本の文学を読むということが、どういう美意識・美学に共振することになり、どうついつい考えなくなってしまうかについて教えられました。中村雄二郎が『哲学入門』で「それ(原理としての感情的自然主義)では、等質化・同質化の原理によって総合し、拡大していくことはできても、異質的なものを含みつつ拡大していくことはできない」と書いていたのを思い出しました。


3、齋藤希史『漢文スタイル』
漢文スタイル
この本を読んだせいで『漢文脈と近代日本』をまた読み返すことになりました。近代文学というと西洋文学の影響ということになりがちだけど、中国古典や近現代の東洋(文学)にもう一度目を向け直させてくれたという点で、大きな意味を持った一冊。魯迅許広平『両地書』、老舎『駱駝祥子』、奥野信太郎『随筆北京』などに誘われました。漱石にも『満韓ところどころ』という紀行文がありますが、今後は中国や韓国も視野に入れた研究ができればと考えています。