2012年の3作

今年見たDVDも含めました。


1、『ニーチェの馬』(タル・ベーラ監督)2011年ハンガリー他、2012年日本公開
映画の力を再認識させてくれた一作。全編を通して強い風に見舞われ続けます。今でもその風音が耳について離れないのですが、それはきっと強烈な映像のせいでしょう。
終末です。せりふ少ないです。ここで描かれる世界観は、私にはどうしても神を持つ(あるいは持ったことのある)人々のものだという気がして、やや距離を感じたりするのですが、それはたとえば、容赦のない自然のことではないのです。それは解らないではないのです。
ただ、それを受け入れるところにしか人間の自由はないのか、という点です。私は、これが人間の自由なのかも、とも思うのですが、本当に理解できているかどうか。
英題は『The Turin Hourse』で、私がIMDbを覗いたときは7.6の高評価を得ていました。
http://www.imdb.com/title/tt1316540/


2、『大いなる遺産』(ジュリアン・ジャロルド監督、BBC TV Movie、DVD)1999年英
いわずと知れたチャールズ・ディケンズ原作。漱石はじめ影響を受けた日本の作家は多かったはず。
出生、身分、出世、怨恨。英国にも社会の自由化・民主化の歴史があったのだな、と改めて思った次第。シャーロット・ランプリングが絶妙の演技をしていますが、映像が何といっても美しい。
それから印象に残った言葉がありました。漱石の小説『虞美人草』の主人公の一人、甲野欽吾さんが義母に対して洩らす言葉に酷似。それは、I am higher than you! 「高い」という価値にしがみつくしかない惨めな男の捨てぜりふ。
この19世紀英国を代表するディケンズの名作を現代のアメリカに舞台を移して描いた作品『大いなる遺産 Great Expectation』(1998年米、アルフォンソ・キュアロン監督)もなかなかの出来です。Gwyneth Paltrowファンなら必見でしょう。
http://www.imdb.com/title/tt0167187/


3、『恋のロンドン狂想曲』(ウディ・アレン監督)2010年米、2012年日本公開
笑えて、ちょっと考えさせられる映画。といっても、これはもう私が個人的にロンドンという都市が好きだからという単純な理由から。
内容的には、明快すぎるくらい明快。功利的なリアリストより、依怙地なロマンティストのほうが幸せになりますよ、と。
そういう意味では、ファンタジーといってもいいくらいなのですが、ただし、皮肉が得意のウディ・アレンですから、どこまで本気かどうか。それでも、いや本気かも、と思わせるところはさすが。Diaを演じたFreida Pintoがすこぶるチャーミング(『Slumdog Millionaire』の彼女ね)。
英題は『You Will Meet a Tall Dark Stranger』。ウディ・アレンでロンドンといえば『Match Point』、『タロットカード殺人事件 Scoop』も良かったですね。
http://www.imdb.com/title/tt1182350/